こんばんは、大佐です。今日も読書感想をやっていきます。今回読んだのは前回の『女の一生』と同じモーパッサンの作品の『脂肪の塊/ロンドリ姉妹』です。
実際は短編集なのですが、傑作と名高い『脂肪の塊』と表題になっている『ロンドリ姉妹』のみで十分かなと思い、この2作に限ったレビューにしたいと思います。
他にも短編が複数収録されていますが、ほとんど読んでいません。よろしくお願いします。
【脂肪の塊について】
モーパッサンの『女の一生』と並ぶレベルの代表作です。フランス語で脂肪の塊(ひどいあだ名(笑))というあだ名を持つ娼婦の女が主役の話です。
脂肪の塊と言われるとぶよぶよの100キロ超えを現代では想像しますが、ぽっちゃりした女性ぐらいのイメージで良いでしょう。人気の娼婦って設定もありますし。
この話はフランスのプロイセン侵攻が舞台で、戦に敗れた町の惨状、プロイセン軍の実情や征服者の理不尽な要求などが描写されています。
この侵略された町から征服者の許可を取って馬車で脱出する娼婦の脂肪の塊含む10名を描写したストーリーです。
この10名というのがざっくり言えばフランスの当時の社会の縮図なんですね。解説に死ぬほど書いてあります(笑)。中でもコルニュデはさんざんバカにされてます(笑)。
この10名が突然プロイセン兵に引き留められ監禁されます。監禁の理由は単に人気娼婦とタダで寝れるチャンスと踏んだからです。ゲスい(笑)。
プロイセンが大嫌いな娼婦は口汚く罵って拒否。それに気を悪くしたプロイセン兵は一同の監禁を解かずに、監禁される日々が伸びていくばかりです。
ここで凄いのが理由をしった9名の反応です。だんだんプロイセン兵から娼婦へと弱者へ責任転嫁していく流れはリアルだと思います。実際こういうこと起きますからね。
最終的にいろいろな策略を持たせて、開放には娼婦を説得するしかないと思い、娼婦の良心をあらゆる方法でとことん攻めていく9名。この世界、悪党しかいないのか(笑)?
とまあ、最後のオチ含めて、社会の縮図、弱者への責任転嫁、一種の洗脳じみた世論のありかた。戦争に敗れた町の惨状など短編ながらギュっと濃縮した作品です。
【ロンドリ姉妹について】
こちらはあっさりとした旅行記。といいたいが、モーパッサン式皮肉い考え方がちょこちょこ散見されます(笑)。
偶然しりあった不機嫌な美女と仲良くなって、旅のお供に加わってくれるお話。ざっくりいうと、なんていうか恋愛における男の軽薄さを描写したような作品です(笑)。
一言でいうと「『脂肪の塊』と肩を並べて表題を飾るにはやや力不足な作品。他の短編と比べると出来は悪くないが、『脂肪の塊』が傑出しすぎていると思う」ですね。
これ読んで他の短編も見てみるか決める指標となる作品。そういうポジションで良いかと。
【総評】
『脂肪の塊』は間違いなく傑作。『ロンドリ姉妹』は『脂肪の塊』と比べると平凡だが、他の短編よりは優れた作品かなという印象です。
しかし、モーパッサンの作品って皮肉~な毒の要素が強めなので、続けて服用すると精神に悪影響があるかもですね。間に他の作者を挟んだ方が良いかもです(笑)。